アラサー隠居

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自分は親を捨てられるか【読書ノート】「楢山節考/深沢七郎」

 

 

 日本人の死生観に言及する多くの本で引用されていて、小説としても名作と評価されている。老人を山に捨てにいく「姥捨山(うばすてやま)伝説」を元にした作品で、老婆「おりん」とその家族らが、村でルール化されている高齢者の死にどう向き合っていくかが描かれている。思わず「自分が同じ立場だったらどうするか」と考えさせられる。

 

 70歳を迎えた老人を楢山(ならやま)に捨てにいく「楢山まいり」という行為に対する登場人物のスタンスは様々だ。食料の乏しいこの村では楢山まいりは美徳とされており、おりん本人は至って前向き。息子の辰平は、実の親を山に捨てることに乗り気ではない。孫夫婦は冷淡に見ている。同じ村の別の親子は、おりん・辰平親子とは対照的で、楢山まいりから逃げようとする親を、子が無理矢理実行させる。

 

 自分が辰平と同じ立場だったらどうするか。辰平と同じく、胸が張り裂けそうになりながらも村のルールに従うしかないかもしれない。ただ、高齢者を山に捨てにいくルールの根底は「食糧難」にある。新たな農地を開拓するとか、農法を改良するとかで食料難を解決し、親が70歳を迎えるまでにルール撤廃に持ち込めないだろうか。そんなことを考えてしまうのは、農業も村暮らしも飢餓も経験していない人間の都合の良い妄想だろうか。

 

  姥捨山伝説は現代の日本には存在しないと思うが、瀕死になった高齢の親に延命措置を施すかの選択を迫られたり、安楽死が合法化された場合、家族の安楽死に同意できるか、といった問題は現代でも生じるかもしれない。また、現代では最低限の食料はセーフティネットで確保できるとしても、高齢者の介護や入院に家族の時間とお金がかかるのは事実。いつの時代も家族の葛藤は避けられないのかもしれない。