He is reclusive

バンライフ、旅、持病のIBS(過敏性腸症候群)、読んだ本などについて

「野外排泄は清浄」という考え方も【読書ノート】13億人のトイレ/佐藤大介

 

 

 「野外排泄」が当たり前だったインドでは、女性が用を足す際の危険や、人口集中都市の汚染などが課題に。モディ政権は国中にトイレを設置する衛生政策を推進するが、補助金の中抜きを目的とした実態のない「ペーパートイレ」が蔓延る。劣悪環境下でのトイレ清掃が不可触民に押し付けられているなど、「トイレ問題」を通じてインドの女性蔑視、行政の脆弱性、不可触民差別といった社会問題が浮かび上がる。

 

 意外だったのは、保守的な人々の中で「水洗トイレ=不浄、野外排泄=清浄」という考え方があること。本書のなかでヒンズー教僧侶は「野外で用を足せば、太陽の暑さによって肥料になり、微生物が分解して姿を消します。しかし、水洗は乾燥できず、いつまでも汚いものとして残るのです」と述べている。水洗の場合に汚物が浄化されるかはシステム次第だと思うが、野外で足された糞便が自然に還りやすいというのは納得してしまった。

 

 旅をしていて、コンビニや道の駅など至る所で清潔なトイレにアクセスできる日本が非常にありがたく感じる一方、緊急的な腹痛に見舞われやすいIBS過敏性腸症候群)患者としては、どこでも野外排泄が許される環境は、それはそれでありがたいのでは、と思わなくもない。鳥などはいつでもどこでも構わず糞を撒き散らし、それが誰かに咎められることもない。それが生き物としては自然な姿だ。あえて積極的に野外排泄をしたいとは思わないが、「トイレでしか排泄を許されない環境」は、それはそれで窮屈かもしれない。