He is reclusive

バンライフ、旅、持病のIBS(過敏性腸症候群)、読んだ本などについて

ちょっと苦言【IBS本】「いちばんわかりやすい過敏性腸症候群/伊藤克人」

 

 

 本のタイトル通り、イラスト多め、文字少なめで「わかりやすさ」に重点を置いている印象。IBS過敏性腸症候群)の主因が「ストレス」にあることを前提にしており、その対処法として「森田療法」や認知行動療法自律訓練法などを簡単に紹介している。低FODMAP食についても一部、触れているが、内容が間違っているように見受けられた。

 

 低FODMAP食について言及があるのは、大腸内視鏡検査の説明のくだり。

大腸内視鏡検査の前には、念のため高FODMAP(フォドマップ)食は避けるのがいいでしょう。

 とあるものの、なぜ検査前だけ低FODMAP食を推奨するのか、何が「念のため」なのか、説明がなく理解に苦しむ。

 

 また、その後のくだりで

 低FODMAP食は、プロテニスプレイヤーのジョコビッチが、アスリートたちを悩ませる過敏性腸症候群に効果的な食事療法として実践し、広く認知された食事療法です。 

 とあるが、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)が実践したのは低FODMAP食ではなくグルテンフリー食ではなかっただろうか。

 

 しかも、同じページ内に書かれている「避けるべき食べ物」という欄には、

(1)種のある野菜、果物(トマト、キウイなど)

(2)繊維の多い食べ物(ゴボウ、トウモロコシなど)

 など、FODMAPの概念とは関係ないカテゴリ分けで食品が羅列されている。

 

 1ページ内に疑問を感じる箇所がこれだけ多いと、他のページに書かれている心理療法なども本当に正しいのか、怪しく思えてしまう。

 

 監修医師の伊藤克人氏のプロフィールを読むと、

専門は心身医学、森田療法(『MORITA』)。産業医学(労働衛生コンサルタント)で、職場のメンタルヘルスに造詣が深い。

 とある。「消化器」というよりは「心療」寄りの人物に見受けられ、そのためストレス対処法にフォーカスした本になったのだろうか。

 

 IBSと疑わしい症状が出てから日が浅く、「病気についてちょっと知りたい」という人には良い本かもしれない。が、私のようにIBSと長年の付き合いで、精神以外の要因を疑っている人間には参考にしづらいと感じたのが正直なところ。

 

発行年:2020年9月(初版を読了)

 

 

人の死生観は短期間で変わる【読書ノート】「生きる勇気 死ぬ元気/五木寛之 帯津良一」

 

 

 大変お世話になった高齢の知人が自死を選んだのを知り、高齢者の死生観について考える機会が増えた。私は以前から「人はなぜ生きるのか」といったことを漠然と考えていたが、それは若者特有の迷いであって、寿命が近い高齢者には「いつ死んでもよい」という潔さがあったとしても、あえて自ら死を選ぶようなことはしないだろう、という根拠のない思い込みがあった。警察庁の発表(https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf)によれば、2020年の自殺者2万1,081人中、70歳以上は5,331人。年間自殺者の4分の1以上が70歳以上という計算になる。

 

 本書で対談しているのは、1932年(昭和7年)生まれの作家・五木寛之氏と、1936年(昭和11年)生まれの医師・帯津良一氏。先日亡くなった知人は五木氏と同い年で、生前はしばしば五木氏の名前を口にしていた。知人は、五木氏の文章の技巧が好きというよりは、五木氏が書く「綺麗な老い方」といった哲学に対して、同い年の人間として共感していたようだ。

 

 帯津氏は、西洋医学東洋医学を組み合わせた「ホリスティック医学」の実践者。ホリスティックはギリシャ語で「全体性」を意味するHolosを語源としている。「ホリスティック医学」について調べるとスピリチュアルで抽象的な説明が目に入るが、要するに、「科学的」なエビデンスのある医療行為だけに頼るのではなくて、患者の死生観や人生哲学、宗教的信念などを包括的に尊重する医学だと私は解釈した。

 

 2人の対談を読むと、今の日本における「死は絶対に避けるべきもの」といった価値観は、ここ最近になってようやく醸成されたものだと気付かされる。2021年に89歳を数える五木氏でさえ、少年時代の心配事といえば、特攻隊として指名を全うできるか、直前で怖くなって逃げないか、ということだったそう。死を美徳とする価値観が成立していたのは、はるか昔の過去のことではなく、今も存命する人が当事者として経験したことだ。

 

 仏教には、この世を「穢れたもの」と見て、厭い離れる「厭離穢土(おんりえど)」という言葉すらある。死者がたどり着く「極楽浄土」は苦しみのない理想世界とされているが、その理想像も時代によって変わるようだ。飢饉に見舞われた昔の人にとっての極楽浄土とは、「食うに困らない世界」だった。私は、より良い社会を築いてくれた先人への感謝は忘れたくないが、食うに困らない今の日本社会が極楽浄土とは思えない。

 

 五木氏は以下のように述べている。

科学技術が発達し、軽薄な世のなかにもなってきたと同時に、だからこそ、生死を哲学的に考えなければならない時代でもあるように思えるんです。

 科学技術の発達が世を「軽薄」にしているのかはわからないが、個人的にも、今は生き迷いやすい時代だと思う。何より私自身が生き迷っている。これは衣食住と健康に恵まれた人にだけ許される贅沢な悩みかもしれないが、現実問題、 「人生100年時代」と言われるほど、長寿な人間(あるいは長寿が期待される人間)が増えている。

 

 本書でも引用されていたが、老後に必要な生活費を貯めるために、現在の娯楽を我慢している若者もいるそうだ。戦争経験の揺り戻しで命や食事の尊さを無条件に説く時代が過ぎて、「やりたいことをやって、任意のタイミングで潔く死ぬ」ことが肯定される時代が訪れるのは、そう遠くないかもしれないと感じた。

 

【IBS本】「パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません/江田証」

 

 

 以前読んだ「自分で治す過敏性腸症候群の本/江田証」、「なんだかよくわからない『お腹の不調』はこの食事で治せる!/江田証」と同様、江田証氏の本。発酵性糖質を避ける低FODMAP食の実践方法などはそもそも、低FODMAP食を考案した豪・モナシュ大学のやり方に沿ったものなので前出の2冊と同じだが、腸や健康にまつわる雑学は前出の2冊よりも多い印象がある。

 

 「【IBS本レビュー】「なんだかよくわからない『お腹の不調』はこの食事で治せる!/江田証」 - アラサー隠居はIBSに怒る」で書いたように、私個人として疑問を感じたフルクトース(果糖)の吸収について、前出の2冊よりも詳細に述べられていた。疑問というのは、「フルクトースの量がグルコースブドウ糖)の量を下回っていれば小腸で上手く吸収されるのに、なぜフルクトースとグルコースのバランスが良好な低FODMAPフルーツを食べすぎてはいけないのか」というものだ。

 

 本書には、 

過敏性腸症候群の人にとっては、食品一食あたりフルクトースがグルコースより0.2グラム多い食品・飲料は、ふつうの場合症状は起こしません。

 とある。ただし、この後の記述で

キウイ100グラム中のフルクトース量4グラム、グルコース量4グラム。四引く四=0グラム(適している)

 とあるので、前出の「フルクトースがグルコースより0.2グラム多い食品・飲料」は、「フルクトースがグルコースを上回る量が(ジャスト0.2グラムではなく)0.2グラム以下(もしくは未満?)の食品・飲料」の間違いだろう。

 

 つまり、フルクトース量がグルコース量を上回っていても、その超過分が0.2グラム以下であれば「低FODMAP食」に分類されるようだ。仮に一食あたりの「フルクトース引くグルコース」が0.2グラム以下の低FODMAP食品でも、食べれば食べるほどその差は広がっていく。結果的にグルコースを上回るフルクトースの量が0.2グラムを超過するので、低FODMAPに該当するフルーツでも「食べすぎてはいけない」というのは理解できる。

 

 さらに、本書には

いくらグルコースとフルクトースのバランスが保たれていても、あまりにもフルクトースを大量にとってしまうと、腸の負担になってしまうことがあります。 

 とあったので、そもそもグルコースとの相対的な量だけでなく、絶対量も関係するらしい。その辺りの原理については本書で述べられていなかった。

 

 腸にまつわる雑学的な知識として気になったのは、腸内細菌の性質が、自閉症の症状や脳の発達(記憶力など)にも関わっている可能性がある、との研究結果だ。私は、自分の意志ではコントロールできない不随意筋である腸に長年悩まされいるが、腸よりも自分の意志から遠い存在である「腸内細菌」に自分の脳をコントロールされているとしたら、なんと滑稽なことだろう。

 

 

五木寛之氏は「アラサー隠居」を経て作家デビュー

 

 

 「五木寛之の金沢さんぽ」という本を読んでいたら、思わぬ発見があった。五木氏も、今の私と同じ「30歳前後」という年齢の時に、東京での生活に疲れて一時、配偶者の実家がある金沢(石川県)に身を引き隠居じみた生活を送っていたようだ。

 

 本には、以下のように書いてある。

 

 私が東京を離れる気になったのは、ひとつは精神的肉体的に疲れ果てていたためかもしれない。私の肺は、古ゴムのように力を失って、空気を充分に吸うことができないような感じだった。(中略)

 だが、肺とは別なところにポッカリ暗い大きな穴があいていて、そこから冷たい風が絶えず吹いてくるのを私は感じていた。

 そんな状態を何といえばいいだろう。一種の無気力状態とでも、また放心状態とでもいうような気分が続き、何もかも、生活のすべてがわずらわしく、うとましく思われたのである。

 私は病気を理由に、当時関係していた仕事のぜんぶから身を引き、金沢へ移住することに決めた。それは、ある意味では早すぎる退場であり、理由のない脱走のようなものだった。

 

 著名な作家と自分の境遇を照らし合わせるのはおこがましいことだが、30歳前後という年齢。精神的肉体的な疲弊から無気力状態に陥り、仕事を放り出して東京から地方に撤退。今の私の境遇と、かなり似ていると思った。 

 

 五木氏の金沢在住時の金銭事情については、以下の通り。働くのを完全にやめたわけではなく、細々とした仕事は続けていたようだ。

 

 私は一家の主としての体面を保つためとぼしいながらも生活費の一部を捻出しなければならず、東京の業界紙やPR雑誌に原稿を送り、時に放送台本を書き、歌の作詞やインチキな翻訳などをしてわずかな金を稼いだ。その年の年間収入は、税務署の査定額がたぶん十四、五万円くらいのものだったのではないだろうか。 

 私は一日の小遣いを三十円と限定し、その枠を守って暮らした。 

 

 現在の物価との違いは、家計収支の場合、消費者物価指数を使えば調整できるようだ。計算方法や指数データが日本銀行のウェブサイト(昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか? : 日本銀行 Bank of Japan)で紹介されていた。

 

 五木氏は1932年生まれなので、金沢で暮らしたのは1962年前後となる。1962年の消費者物価指数は20.6で、2020年は102.3。約5倍の差だ。

 

 五木氏の言う「税務署の査定額」が、個人事業主としての経費や基礎控除を引いた後の数字なのか、単純にその年に稼いだ総額なのかはわからない。サラリーマンの額面年収と変わらない概念と仮定した場合、今の貨幣価値に換算すると15万円×5で年収約75万円ということになる。

 

 一方、「一日の小遣い」である30円は、今の貨幣価値で150円。あまりにも少なく思えるが、当時の五木氏は公共交通機関すら使わず、「コーヒーを飲むためには二日か三日、一円も使わずに我慢しなければならなかった」とあるので、計算は大体合ってそうだ。

 

 それまでも原稿執筆や作詞などを生業にしていた五木氏だが、この金沢での生活中に「さらばモスクワ愚連隊 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)」を執筆し、小説家デビュー。同作は小説現代新人賞、近い時期に執筆した別の作品は直木賞に輝く。前線からの一時離脱がクリエイターの創造力を育むことは、「ミニリタイア」を提唱するStefan Sagmeister氏(仕事から一時離脱するミニリタイアという生き方 - アラサー隠居はIBSに怒る)も強調していたが、五木氏にとっても「飛躍の隠居生活」になったようだ。

 

【IBS本レビュー】「なんだかよくわからない『お腹の不調』はこの食事で治せる!/江田証」

 

 前回読んだ「【IBS本レビュー】低FODMAP食の教科書的な「自分で治す過敏性腸症候群の本/江田証」 - アラサー隠居はIBSに怒る」と同様、江田証氏の本。「自分で治す〜」の方は全ページカラーで多くの図がレイアウトされているのに対して、こちらは基本的に文章のみ。低FODMAP食の実践方法など重複する内容も多いが、本書にしか書かれていないこともあった。

 

 その一つが、IBS過敏性腸症候群)患者の腸内で過剰になりがちな「短鎖脂肪酸」にも様々な種類が存在すること。主なものに乳酸、酪酸、酢酸、プロピオン酸の4種類があり、IBS患者の腸内には乳酸をつくる「ラクトバチラス」と、酢酸・プロピオン酸をつくる「ヴァイヨネラ」という細菌が多いそうだ。残りの1種類である酪酸に関しては過剰にはならないようだが、それがどのように影響するのかが気になった。

 

 また、江田氏の患者のなかで「ライザップに通っていたら、なぜかお腹の症状も治った」という人が多いそうだ。これは、ライザップが指導している「炭水化物制限ダイエット」が影響しているらしい。炭水化物はほぼ糖質なので、これを制限すると発酵性糖質であるFODMAPも自ずと除去される。炭水化物を1日20グラムに制限することで下痢型IBSが改善したという論文もあるんだとか。「【IBS本レビュー】「バイバイ!過敏性腸症候群(IBS)/綿樽剛」 - アラサー隠居はIBSに怒る」の著者も、糖質制限で症状が改善したと書いていた。

 

 一部、「自分で治す〜」で書かれている内容と異なる点が見受けられた。まず、FODMAPのM(単糖類)に該当する「果糖」が比較的少ないフルーツの摂取量の上限について。「自分で治す〜」の方では「バナナ1本またはオレンジ1個まで」が「1日の上限」と書かれていた。一方、今回読んだ「なんだかよくわからない〜」の方では、「一度に食べる量は、トータルで普通サイズのオレンジ1個程度にするとよいでしょう。1日に何度食べても大丈夫ですが、できるだけ2時間以上空けて食べてください」とある。オレンジ1個(バナナ1本)が「1日」の上限なのか、「一度」の上限なのかでは大きく変わる。2つの本が出版される間に見解が変わったのか、単なる編集ミスかはわからない。

 

 これは両書の差異とは別の話だが、そもそも低FODMAP食に該当するオレンジやバナナを食べすぎてはいけない理由がわからない。両書とも、果糖の吸収にはブドウ糖が関わっており、果糖とブドウ糖のバランスさえとれていれば(果糖の量がブドウ糖の量を下回っていれば)吸収には問題ない、といった解説がされているからだ。オレンジやバナナが含む果糖とブドウ糖の比率は、どれだけ食べようと一定なはず。結局は果糖の絶対量が影響するのだろうか?

 

 また、FODMAPの「P」に該当するポリオールの吸収について。「自分で治す〜」の方では「小腸で吸収するのがむずかしい形状をしていて、吸収する能力には個人差があります」とあるが、「なんだかよくわからない〜」の方では「その大きさや性質上、小腸で吸収ができません」と断じている。

 

 総じて参考になる内容が多かったが、本書のタイトル通り、他著書との「なんだかよくわからない」違いが気になったのが正直な感想だ。

 

【IBS本レビュー】低FODMAP食の教科書的な「自分で治す過敏性腸症候群の本/江田証」

 

 

 過敏性腸症候群IBS)や低FODMAP食について、多くの著作を持つ医師・江田証氏が監修した本。IBSが発症する原理や、低FODMAP食の具体的な実践方法などが収められている。全ページカラーでイラスト多めなので、素人にもわかりやすく感じた。食品を高・低 FODMAPで分けた一覧図もあり、低FODMAP食の教科書的に利用できそうだ。

 

 FODMAPとは4種類の発酵性糖質を表す言葉だが、小腸での消化のされ方は種類によって異なるようだ。オリゴ糖はそもそも、IBS患者に限らず、誰もが消化できないらしい。果糖は、ブドウ糖よりも濃度が高くなると吸収が遅くなるので、果糖とブドウ糖のバランスが大事とのこと。こういった消化の仕組みが丁寧に解説されている。

 

 同書によれば、IBS患者は、細胞のエネルギー源で、感染症予防などにも作用する「短鎖脂肪酸」をつくりやすい腸内細菌を持っている。IBS患者が一般的な人にとって良いとされている食物繊維や発酵食品を食べると、短鎖脂肪酸が「過剰に」つくられて腸内が酸性に傾き、ガス・下痢などの症状が出るとのこと。

 

 私の理解が正しければ、IBS患者が、体に良い作用のある短鎖脂肪酸をつくりやすいのは、ある意味で「強み」ではないか。食物繊維や発酵食品といった、一般的な人が「食べなくては健康を維持できない」ものを、IBS患者は「食べなくて良い」とすれば、生物的には「強い」と言えるのではないだろうか。私は「お腹の弱さ」にコンプレックスを感じているが、必ずしも引け目を感じる必要はないのかもしれない。

 

 同書で紹介されている低FODMAP食の実践方法は、まず3週間、徹底して高FODMAP食品を排除する。それから1週間ごとにフルクタンを含む食品→ガラクオリゴ糖を含む食品・・・と順番に試し、食べても問題のない糖の種類および食品を見極めていく。「パン2切れまたはにんにく1片」など、試すべき食品と分量が具体的に書かれていたので、実践しやすいと感じた。

 

 巻頭でコラム的に書かれている「あの偉人たちも過敏性腸症候群だった」が地味に面白い。江田氏いわく、石田三成とベートーベンはIBSの可能性があるらしい。松尾芭蕉が下痢で亡くなったのは私も知っていたが、これはIBSでなく食中毒との診断だ。

 

 なお、同書は現在、電子書籍でしか出版されていないようで、紙の方はAmazonの中古市場で3,000円以上した。そのため私はKindle版の電子書籍で購入したが、各ページがテキストも含めてそのまま画像化されており、テキスト検索やマーキングができず、不便に感じた。とはいえ電子書籍であればいつでもスマートフォンで見ることができるので、外食先やスーパーで高・低FODMAP食品の一覧図を参照したい時などに便利そうだ。

 

 

【IBS本レビュー】「バイバイ!過敏性腸症候群(IBS)/綿樽剛」

 

 

 「【IBS本レビュー】「過敏性腸症候群(IBS)は治らない?/Kazuya_M」 - アラサー隠居」と同じく、Kindle Unlimitedの読み放題で読んだ(単体購入も可能)。物心ついたときから「お腹の弱さ」に悩まされていた筆者が、いかにIBS過敏性腸症候群)を克服したか。生活や食事の工夫が書かれている。

 

 徒歩5分の通学路で便意を我慢できず何度も家に戻ったり、数々の「うんこ漏らし」を経験したりした筆者に比べると、自分の症状はまだマシなんだと感じた。ただ、私もIBS症状が酷くなる前からお腹の弱い子供だったので、筆者の「自分のお腹が弱いのは生まれつきなんだと思いこんでいました」、「頻繁にトイレに通う自分の特徴が『病気』だとは思っていなかった」といった言葉には強く共感する。

 

 症状の酷い筆者が、いかにIBSを克服したか。早起きで朝の時間に余裕を持つことや、食事の糖質制限が奏功したようだ。

 

 IBSの食事療法としては、発酵性糖質を含む食品を避ける低FODMAP食が有名で、私も試しているが、(発酵性糖質に限定しない)糖質制限の活用は初めて知った。糖質制限食のなかでも、筆者は肉(Meet)と卵(Egg)とチーズ(Cheese)を主食にする「MEC食」を実践し、効果を実感しているようだ。

 

  私は低FODMAP食を始めてから3週間くらいまでは下痢の頻度が減っていたが、最近は再び調子が悪くなってしまった。摂取カロリーを米に頼って多く食べるよう心がけていたので、それが原因の可能性もあるな、と感じた。今後、低FODMAP食と合わせて、米の量が体調に影響するか意識してみたい。また、筆者が推奨している、毎日の食事内容と排便を記録する「食べたものログ」も実践したい。

 

 筆者は、IBSとトイレにちなむ赤裸々な体験があまりにも恥ずかしいので、この本を「家族にも内緒で執筆」したらしい。この病気や、トイレにまつわる体験談がもう少しオープンに話せる社会になってほしいと願う。